関節リウマチについて

 関節リウマチは体中の関節が腫れて痛くなり、徐々に変形していく病気です。原因は残念ながら解明されていません。一般的にお年寄りの病気と思われがちですが、じつは平均40歳代の女性に発症することが多い若い人の病気です。日本国内に約70万人の患者さんがおられると考えられています。子育てをしながら家事仕事に忙しい頃に発症しますので、関節リウマチになった女性にとっては大変です。またあとで述べますように医療費のことでも患者さんには経済的にも精神的にも負担になります。長年にわたって全身の関節が痛み、変形し、徐々に普段の生活の能力(日常生活能力)が悪くなり、膝や股関節が悪くなると歩くこと(歩行能力、移動能力)も困難になります。生活の質、人生の質(QOL)が低下します。患者さんご自身はもちろんのこと、ご家族みんなが色々な意味で大変です。関節の痛みが強くなると、人工関節などの手術が必要です。関節リウマチの治療がうまくいかないと、肺炎、骨粗しょう症などの病気になりやすくなり寿命も短くなってしまいます。最近までは有効な治療方法がなく、上手に病気とお付き合いしていただくのが治療の中心でした。

 

 しかし、メトトレキサート、生物学的製剤などの新しい抗リウマチ薬が登場し関節リウマチの治療はめまぐるしく変化しました。関節リウマチになって早期の患者さんでは、関節の破壊を予防することができるようになりました。治療の目的は症状を和らげるだけでなく病気を治すこと(寛解)になりました。もし関節の破壊が進んでいても、今後病気が進行しないことを治療の目標とすることができます。以前とは治療方法、治療の目的が劇的に変わったのです。ですから関節リウマチと新たに診断されても正しく治療を受ければ心配はありません。

 

 治療方法が良くなったため、関節リウマチの診断方法(診断基準)も改訂されました。理由は従来の診断方法では関節リウマチと診断するまでに時間がかかりすぎるためです。現在の治療方法では、関節リウマチになってできるだけ早い時期に治療を開始することが大事です。そして早い時期に正しく診断し治療を開始すると治療結果がよいことがわかっています。将来関節の機能が悪くなる可能性がある場合はメソトレキサート(メトレート、リウマトレックス)を中心に治療します。メソトレキサートのみでは治療困難な場合は、他の抗リウマチ薬を追加するか生物学的製剤を使用します。

 

 治療方法は約3か月に一回評価する(タイトコントロール)ことが必要と考えられています。以前はよい治療方法もなかったためあまりお薬を変更せずに病気の状態を見守っていることが多かったのですが、治療方法がわかってきた現在では、より良い治療結果を求めてこまめに治療方法を選択していきます。そうでないと一旦関節の軟骨や骨が傷んでしまうと元に戻せなくなるからです。

早期の正しい診断が重要

 関節リウマチの治療で最も大事なことは早期診断・早期治療です。新しくなった診断基準を用いることは当然ですがそれだけで100%診断できるわけではありません。血液検査だけでは正しく診断できません。患者さんの手足の関節を一つずつ診察し評価します。よく似た他の病気の鑑別も重要です。必要であれば関節エコー、MRIなどの検査を行います。

 

お薬(抗リウマチ薬)について

 関節リウマチと診断した場合、抗リウマチ薬での治療を開始します。よい治療方法がなかった頃は、痛み止めやステロイド剤のみを投与することもありましたが現在では早期に治療を開始したほうがよいと考えられています。関節の破壊が予想されるときはメソトレキサート(メトレート、リウマトレックス)を中心に治療します。世界中で関節リウマチの治療薬として使われているお薬です。強いお薬ですので使い方は慎重にします。正しく使用し、副作用のチェックを的確に行えば怖いお薬ではありません。メソトレキサート使用開始時には、このお薬の注意点などを説明させていただき、必要な検査(血液検査、尿検査、胸のレントゲン検査)なども行います。治療内容はタイトコントロールの考えで、3か月ごとに評価します。そして治療効果が期待通りでなければお薬内容を変更します。
 胸部レントゲン検査は非常に重要ですので、当院では放射線専門医の読影も必ず行い二人の医師により慎重に診断しています。必要であれば胸部CT検査を行い、呼吸器内科専門医へ紹介することもあります。
 お薬の内容を変更するときは世界中で使用されているガイドラインの考えに従って変更します。抗リウマチ薬を変更したり、追加したりします。最近ではメソトレキサート(メトレート、リウマトレックス)にリマチル、アザルフィジンの2剤を追加する3剤併用方法や、メソトレキサートにプログラフなどの免疫抑制剤を追加併用する方法も行っています。

 

生物学的製剤について

 飲み薬の抗リウマチ薬のみでは効果が不十分なときには生物学的製剤を使用します。メソトレキサートに生物学的製剤が使用できるようになって関節リウマチの治療は劇的によくなりました。それまで治療困難であった活動性の強い関節リウマチの患者さんであっても病気の進行を止めることができるようになったのです。関節リウマチは個人差のある病気ですので全ての患者さんに生物学的製剤が必要ではないと考えられています。日本では約20%の患者さんに使用されています。当院でも約140人の患者さんに使用しています。数年前までは非常に治療が困難な患者さんにのみ使用していましたが、最近では発症早期の患者さんに積極的に使用するようになりました。発症早期の患者さんに使用すると寛解(病気の活動がストップすること)できる患者さんが多くなることが判ってきたのです。正しく使うと副作用などの心配がないことも判ってきました。日本で使用できる生物学的製剤は8種類になりました。投与方法、投与間隔も色々あり患者さんの考え方、ライフスタイルに合った生物学的製剤を選択できるようになりました。問題はお薬の値段が高額であることです。ただ日本には治療費が減額される色々な制度があります。個人個人で適応されるかどうかも条件により異なります。個別に相談させていただきますのでご希望の方は個人的にご質問ください。

最新のリウマチ医療を患者様に提供するために

 最新の医学の水準を保つため学会活動も積極的に行っています。日本リウマチ学会や日本臨床リウマチ学会は特に重視し参加しています。また地域医療においては病診連携をすすめるため色々な会の世話人、座長なども務めています。私だけではなく全ての職員のレベル向上を目指しています。年に数回、院内で職員の勉強会を行っています。兵庫リウマチチーム医療研究会には看護師、理学療法士の他、事務職員も含め毎回参加しています。
 また早期診断、治療の評価に必要な高度な機能を持つ超音波器械も導入しています。X線なども関係ありませんので、非常に体にやさしくかつ正確な診断評価が可能になりました。
 私たちは患者様に常に最新の的確な医療を提供できるよう勉強しています。

地域のリウマチ専門医として

 現実の診療では治療はなかなか理想どおりにはすすみませんが、勤務医時代には出来なかったことがクリニックを開業することにより可能になったことがいくつかあります。一つは患者さんとの間柄が近くなったことです。患者さんがいつ来院しても私自身が診察することができます。午後の診療も土曜日の診療もあり私が診察します。木曜日は特に重症な患者さんでも通院しやすくなるように予約診療にしました。患者さんに何か不安なことがあればいつでも電話をしていただき私がお話をすることができます。もし通院が困難になったときは、定期的に訪問診療を行います。緊急時には患者さん宅に往診します。大病院では困難になってきた通院でのリハビリテーションがこのクリニックでは可能です。通院が困難な患者さんには、理学療法士を当院より派遣し訪問リハビリテーションを行っています。これらのことは勤務医の時にはとても出来ませんでした。
 関節リウマチの患者さんは、呼吸器などの合併症も多く、骨折や人工関節の手術のため入院治療が必要になることも少なくありません。日ごろから周囲の病院診療所の先生方と連携し協力して診療することも、クリニックに通院していただく患者さんのために必要と考えています。地域において大病院よりも、関節リウマチのタイトコントロールが可能と感じています。